第13話 悉皆屋さん
本日は パパタラフマラ舞台芸術研究所(P.A.I)での
http://pappa-tara.com/pai/
コーラス講師のお仕事で 中野に。
帰りに いつもは 中野ブロードウェイに行くのですが
最近少し飽きてきたので
ふと 別の通りを歩いてみたら
あら 呉服屋さんが。
中に入ってみたかったけど 入りにくい雰囲気。
外から眺めて スルー。
しばらく行くと あらまたっ。
ショーウィンドウには 結マークの結城紬が…。
いいなあーーー。
ちらっとのぞくと 小物もならんでる。
これなら いけるかな!?
おそるおそる 入ってみる。
すると奥から 『いらっしゃい』とご主人。
私は このごろ もう無茶苦茶に 半襟つけが億劫になっていて
すぐよごれてしまうのに 洗っても中々落ちない上に
黄ばんでしまう 絹の半襟のあつかいが面倒くさくて
ポリに見えない ポリの半襟を探していたので
本日もそのあたりを物色していると
わりと ポリらしくない感触で その上もう襟の形になっている
いわゆる ワンタッチ式の襟が目に入り 思わず手にとってみた。
すると ご主人
『それはねえ だめです。』
…笑…だって売っているのに!
でも やっぱり浮いてしまってきれいに決まらないから…と
売りたくないご様子。
『手間がかかっても やっぱりご自分で縫い付けたほうが…』
「はい…でもしょっちゅう着ていると すぐっ汚れてしまうのでねえ…』
そんなやりとりからはじまって
結局そこで そのご主人と 1時間以上おしゃべりしてしまいました。
ご主人は 着物のことを とにかく話したくてたまらないかんじ。
わたしも 着物のことを 聞きたくてたまらないわけで
ふたりでしばし 夢心地に盛り上がってしまいました。(笑)
そのお店は 呉服屋さんではなく 悉皆屋さんだったんです。
『うちは呉服屋じゃあないんですよ』
『ああ 悉皆屋(しっかいや)さんなんですね?』
『わああなた 若いのによくごぞんじですねえ。
今 悉皆なんて 字も読めないひとばかりなのに!』
ふたりで 盛り上がる盛り上がる。
色々なものを出して来て 見せてくださいました。
染み抜きに使うブラシから 今考え中の 帯の図案まで。
そうそれから 浦野理一さん監修の名物裂れの本と
その中のひとつを復元して織らせたという 帯も!!
なんと 浦野理一さんと懇意にしていらしたんだそうな。
『えーっ 浦野理一さんですか?わおっ 帯 ほしいですよねえ』
『ほお 浦野さんをご存知ですか? あなた勉強してますねえ』
もうふたり 盛り上がる盛り上がる。
なんとも楽しいひとときでした。
今度 着物の生き洗いをお願いしてみようかな。
長襦袢のたもとの汚れも 油断しているとひどいことに。
チェーン店の呉服屋さんの 安いときに生き洗いにだしても
そういう汚れは 落ちて来ない。
染み抜きは別料金で とても高い値段をいわれる。
それにそういうところは 何枚もまとめて機械でぐるぐる。
だから 縫い目が痛むのだそう。
ここのお店では 一着づつ たらいで手洗い。
汗も心配ないように 手入れしてくれるのだそうです。
料金は えっと 袖 襟 裾だけの部分洗いなら\4000くらい。
丸洗いだと\7000くらいだったかな。
高いけど 安いのかもしれない。
その作業工程と仕上がりを考えたらね。
それでもやっぱり
期間中丸洗い\2000に負けて 今まできたのだけれど
なんだか 今日は こころ動かされたなあ。
人と人とのふれあいって やわらかくて ちからがありますね。
いいなあ きもの。
すきだなあ きものを好きなひと。
木村 真紀 (2010年11月16日)
【木村真紀流】 おきもの解説
着物の手入れ全般(洗い張り 生き洗い 染め替えなど)を請け負う店
長襦袢の襟に 汚れ防止と装飾目的で 縫い付ける襟
posted: 2010.11.16